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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

 トスとウォンジュンが交わしていた会話の断片が甦る。しかし、トスの言いたいことはまだ別にあったらしい。
「そして、李家の当主、つまりウォンジュンの父親の方もこの話には乗り気らしい」
「え、何ですって」
 キョンシルは我が耳を疑った。
「実は、今日ここに来たのは父親だけではない。息子のウォンジュンも父親より少し後に、俺を訪ねてきたんだ」
「それって、もしかして、私をお嫁さんに欲しいって言いに来たの?」
 ああ、と、トスはキョンシルの絶望を更に決定的にする言葉を口にした。
「俺は良い縁談(はなし)だと思うがな。嫁ぎ先はこの町で随一と呼び声の高い絹店、都にも支店を持つほどの豪商イ・ソンジュンの息子だぞ? しかも息子だけでなく、父親までもが認めているんだ。滅多に降って湧いてくるような嫁入り話じゃない」

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