テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

「だから?」
 涙の塊が込み上げてくるのをキョンシルは堪えた。トスが苦いも薬でも飲んだときのように顔をしかめた。
「ゆえに、この際、向こうの意を受けても良いのではと、俺は思うんだがな。そなたが李家に嫁いで幸せになれば、あの世のソンニョも安心して眠れるだろう」
「トスおじさんは心からそう思うの? 私が李家に嫁げば幸せになれるって、本当に信じてるの?」
 トスは泣き笑いのような表情で言った。
「当たり前だろう。何しろこの町一といわれている絹店の―」
「お金、お金! トスおじさんがそんなにお金持ちが好きだとは知らなかったわ。それほどの良縁だと思うのなら、私じゃなくトスおじさんが嫁に行けば良いじゃない」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ