テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

「お祖父さまはお父さんに有り余るほどの期待を賭けていたんだ。あの方にとって、チソンは希望のすべてだったんだよ。その大切な一人息子を私はお祖父さまから奪った。あの方がひどく失望してお怒りになったのも仕方のないことだったんだ、そう、すべてが運命だった。だから、お前もけしてお祖父さまを恨んではいけない」
 ミヨンは大きな息を吐き、続けた。
「できれば、お前が一人前になって嫁にいくのをこの眼で見たかったよ。この花嫁衣装、いやでなければ、お前が嫁にゆくときに着ておくれ。いつか、お前だけを見つめてくれる良い男を見つけて、幸せにおなり」
 その時、ミヨンがハッハッと短く浅い呼吸を繰り返した。
「ごめんよ、お前を一人残して逝くけど、許しておくれ。トスにも済まないと伝えて―」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ