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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

「とすれば、やはり、間違いなく、お母さんは心臓を患っていた。これは効果もあるだけに、きつい成分が入っていてね。匙加減も難しいとされているんだよ。薬も過ぎれば毒となる。よほど熟練した薬屋か医者が調合しなければ、時として、かえって仇になることがある」
「もしや、母は薬が原因で亡くなったのですか?」
 もしそうならば、明日にでも薬屋に怒鳴り込んでいってやる。そう思ったキョンシルに、医者はいささか気の毒げに言った。
「残念ながら、薬のせいではない。この症状から見るに、お母さんは大きな心臓発作を起こした。それが直接の死因だ。つまり、お母さんがこれまでに左胸が痛いとしきりに訴えていたのは、小さな発作を繰り返していたということだ。お母さんが亡くなったいちばんの原因は、その繰り返していた発作を見逃していたことだよ」

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