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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 医者は鼻下の髭を撫でつつ呟いた。
「お母さんは君に何も言わなかったのか? この薬は毒にもなり得る成分が入っているだけに、買う者には成分や効能について詳しく説明するように義務づけられているんだがな。ゆえに、お母さんは自分が心臓を患っていることを知っていたはずだ」
 キョンシルは力なく頷いた。
「何も聞いてはいませんでした」
「もっと早い段階で気づいていれば、手の施しようはあったものを」
 その時、トスが立ち上がった。
「もう、良い。先生、幾らキョンシルを責めたところで、死人が生き返るわけではない。これ以上は止めてくれ」

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