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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 医者は肩をすくめた。
「確かにお前さんの言うとおりだ。だが、医者としては残念でならないよ。助かるはずの生命をみすみす救えなかったのだからね」
「おい、止めろと言ってるだろう」
 トスの声が凄みを帯び、医者はその剣幕に怯んだ。
「わ、判った」
 慌てふためいて出ていく医者に続いて、トスが出ていく。
 キョンシルはその場にくずおれた。まるで身体中の力という力が抜け出てしまったかのようだった。
「あの藪医者め」
 突如としてトスの声が背後で聞こえた。

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