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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

 やはり、もう駄目なのか。遅すぎたのだろうか。キョンシルの心が絶望という闇に染まりそうになった時、トスの低い声がしじまを切り裂いた。
「子どもだと思っていながら、俺はいつしかそなたを女として見るようになり、好きになった」
 いや、と、トスは自らに言い聞かせるように言った。
「もしかしたら、俺はそなたを愛しているからこそ、余計に子どもだと自分に無理に言い聞かせて、現実から眼を背けようとしていたのかもしれないな。だが、キョンシル。ソンニョは―そなたの母は、俺たちのことをどう思うだろうか」

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