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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 もう、トスは大丈夫だ。刻は要するかもしれないが、少しずつ本来の彼らしい明るさを取り戻してゆくに違いない。
 キョンシルが思わず笑みを浮かべたその時、少し前方に人だかりができているのが視界に入った。幾重にも人の輪ができ、随分とかしましい。ふと気になり、側を通り掛かった中年の職人風の男に訊ねてみた。
「おじさん(アデュッシ)、何かあったの?」
 屈託なく訊ねるのに、小柄な男は肩を大仰に竦めた。
「世間知らずの若造がちっとばかり痛い眼に遭ってるのさ」
 どうにも物騒な科白である。キョンシルは眉をひそめた。
「喧嘩なの?」

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