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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 と、男は鼻を鳴らした。
「フン、片方が一方的にやられるだけで喧嘩と言えるのならね」
「まあ、では、どちらかが勝負にならないくらい強いってことなのね」
 キョンシルは小さく首を振った。
「それは、あまり感心できないわ」
「なに、構うものか。弱っちい両班の倅なんざァ、根性からたたき直して鍛えてやらなきゃならないんだよ」
「そんな」
 キョンシルは即座に走り出していた。
「おい、止めときな。両班をのしているのは、ここいらではちょっとは名の知られた剛の者火龍のソマニだぜ」
 しかし、キョンシルは既に男の声は届かない場所を走っていた。

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