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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 キョンシルはまた、トスとソンを交互に見た。トスとキョンシルはやや大きめの小卓を二人で使い、一応、客人であるソンの前には一人用の小卓が並んでいる。卓の上にはキョンシルが拵えた雑炊と野菜のおひたしが並んでいた。
「ソンは見るからに両班のお坊ちゃんみたいだけど、こんなものが口に合うかしら」
「私はキョンシルの作るものなら、何でも口に合うと思うぞ」
 屈託なく言ってのけたソンを、トスが物凄い眼で睨んだ。大抵の者であれば、震え上がってしまうような視線も、ソンには威力はないらしい。彼は相変わらず微笑んでいる。
「近頃の両班家の子弟は、学問だけでなく、女の口説き方まで学んでいると見えるな」

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