テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

「―ソン?」
 枕元にひっそりと佇むのがソンだと知り、キョンシルの全身に漲っていた緊張が解けた。
「済まない。私はどうやら、そなたの親父どのを怒らせてしまったようだ」
 キョンシルは小さく溜息をついた。
「トスおじさんは私の父ではないわ」
「父御ではないと? では」
 物問いたげに見つめられ、キョンシルは薄く微笑った。
「私の慕っている男(ひと)よ」
「キョンシルの慕う男」
 何故かソンは魂を抜かれたように茫然と呟いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ