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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

旅立ち

 美瑛の野辺送りは、随分とひっそりとしたものになった。母子が暮らしていたのは都の外れの下町であった。その界隈は似たような小さな家が密集している。いずれもその日暮らしの貧しい庶民ばかりだ。
 むろん、キョンシルが生まれる前から親交のある近隣の人々は集ってくれたものの、それでも、弔問客はせいぜいが十数人ほどであった。
 それでもキョンシルは気丈にふるまい、集まった人々に簡素な酒肴をふるまったり、挨拶して回った。が、すべてが終わり集まった人々が皆それぞれ帰ってしまうと、張り詰めていた緊張の糸がぷっりと切れた。

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