側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
トスはもちろん通夜からずっと側にいて、キョンシルを支えてくれた。いよいよミヨンの棺を土に埋めるときになって、棺に取り縋って離れないキョンシルを優しく宥めて引き離したのもトスであった。
皆が引き取った後、狭い家の中はトスとキョンシルだけになった。
「トスさん、今日は本当にありがとうございました。何てお礼を言ったら良いのか」
キョンシルは頭を下げると、やおら立ち上がった。部屋の片隅に行くと、壊れかけた箪笥を開け、例の首飾りを出してくる。母が息を引き取る間際、キョンシルの出生を証明する品だと託したものだ。
「まだ楊先生に支払った診療費も返してなくて、ごめんなさい。すぐにでもお返ししたいんだけど、お母さんのお葬式を出すのが精一杯で、今、うちにはお金が殆ど残っていないの。だから、この首飾りをお金に換えて貰えればと思って」
皆が引き取った後、狭い家の中はトスとキョンシルだけになった。
「トスさん、今日は本当にありがとうございました。何てお礼を言ったら良いのか」
キョンシルは頭を下げると、やおら立ち上がった。部屋の片隅に行くと、壊れかけた箪笥を開け、例の首飾りを出してくる。母が息を引き取る間際、キョンシルの出生を証明する品だと託したものだ。
「まだ楊先生に支払った診療費も返してなくて、ごめんなさい。すぐにでもお返ししたいんだけど、お母さんのお葬式を出すのが精一杯で、今、うちにはお金が殆ど残っていないの。だから、この首飾りをお金に換えて貰えればと思って」