
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に
ソンは頷くと、キョンシルを優しい眼で見つめた。
「今日は本当にありがとう。明日の朝、できるだけ早く出ていくから」
ソンはそう言うと、また両開きの扉を押して小部屋に戻っていった。キョンシルもまた床に戻ったものの、意識の芯が冴えて、なかなか眠れない。粗末な夜具の中で幾度も寝返りを打ったが、傍らのトスは何の反応をも示さなかった。
―起きているはずなのに、眠ったふりをするなんて、どういうつもりなのかしら。
キョンシルにはトスの思惑が正直なところ、全く理解できなかった。頑なに背を向けているその後ろ姿を見ていると、何かキョンシルという存在そのものを真っ向から否定されているような気分になってしまう。
「おやすみなさい」
声をかけてみたけれど、やはり、トスからは何の応(いら)えもなかった。
「今日は本当にありがとう。明日の朝、できるだけ早く出ていくから」
ソンはそう言うと、また両開きの扉を押して小部屋に戻っていった。キョンシルもまた床に戻ったものの、意識の芯が冴えて、なかなか眠れない。粗末な夜具の中で幾度も寝返りを打ったが、傍らのトスは何の反応をも示さなかった。
―起きているはずなのに、眠ったふりをするなんて、どういうつもりなのかしら。
キョンシルにはトスの思惑が正直なところ、全く理解できなかった。頑なに背を向けているその後ろ姿を見ていると、何かキョンシルという存在そのものを真っ向から否定されているような気分になってしまう。
「おやすみなさい」
声をかけてみたけれど、やはり、トスからは何の応(いら)えもなかった。
