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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 キョンシルは昼食を取るのも忘れ、ソンの看病に専念していたのだ。疲れと心配のせいで、いつしかソンの枕辺に打ち伏して眠っていた。
―キョンシル、キョンシル。
 いつしかキョンシルは夢を見ていた。優しく微笑む美しい母が向こうで手を振っている。
―お母さん(オモニ)!
 どれだけ逢いたかったろう、恋しかったろう。キョンシルも所詮、十五歳の少女なのだ。久しぶりに母に逢えた歓びに瞳を輝かせ走りだそうとした刹那、蓮花のような母の顔が曇った。

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