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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

「そう―なの。私は今年の春に母を亡くしたのよ。トスおじさんは」
 少し躊躇(ためら)ったけれど、この優しい青年の前では話しても良いのではとごく自然に思えた。
「トスおじさんは、亡くなったお母さんの婚約者だったの」
 ハッと息を呑む気配が伝わってきた。流石にソンも予期せぬ話の展開に言葉を失ったようだ。
「トスどのがキョンシルの母御の―」
 キョンシルがふっと儚げに笑った。
「愕くわよね。でも、本当の話。ソンも私を軽蔑する?」
「いや、軽蔑などはしない。だが、キョンシル、トスどのはそなたのことを何と?」

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