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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 先刻の夢は恐ろしいというよりは哀しかった。トスが〝天女(ソンニヨ)〟と呼んだ清らかな美貌を醜く歪め、怒りに我を忘れていた母。あんな母を叶うことなら、見たくはなかった。
 大好きな母にあんな憎しみと恨みに満ちた眼で見られるくらいなら、いっそのこと、自分が先に逝った方が良かった。それほどに辛い苦しい夢だった。
 キョンシルは華奢な身体を小刻みに震わせた。知らず滲んだ涙が頬をつうっとつたい落ちる。
「私が、死ねば、良かったんだわ」
「キョンシル!」
 次の瞬間、キョンシルはソンの逞しい腕にふわりと抱き取られていた。

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