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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

「このような高価な品を何ゆえ、そなたが持っている?」
 明らかに訝しむ口ぶりである。
 キョンシルが半ば自棄のように言った。
「その日暮らしの貧乏人が持つにはふさわしくないから、私が盗んだとでも?」
「何も盗んだとは言っていない。ただ、どこで手に入れたのかと訊いているだけだ」
 静かに応えるトスに対して、キョンシルはムキになった。
「同じことでしょ。こんな高価な首飾りを私が持っているのは不自然だから、何で持っているのかと疑っているのよ、違う?」
 トスは何も応えない。キョンシルは彼のいつもと変わらない静謐さに余計に苛立った。

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