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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

 キョンシルが手を差し出すと、ソンが嬉しげに靴を乗せてくれた。ひと揃いの靴は、淡い桜色、つま先の方に撫子の花が刺繍してある。撫子は好きな花の一つだ。丁度、今時の季節にふさわしい意匠(デザイン)である。
「履いてみて」
 促され、キョンシルはソンの肩先に掴まり、草鞋から靴に履き替えた。靴は誂えたように、キョンシルの小さな脚にぴったりだ。
「素敵だわ。それに、履き心地も良い」
 キョンシルは若い娘らしく素直な歓びを示す。その様を傍らからソンも嬉しげに眺めた。
 再び並んで歩きながら、キョンシルは気になっていたことを訊ねた。

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