側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
ソンニョはそなたに心配をかけまいとして、敢えて真実を語ろうとしなかった。そなたの母が最も願っていたのは、娘の幸せだったのだ。その母の心根を思えば、母の後を追うと言い張るのがどれだけ親不孝なことか判るだろう?」
キョンシルは頬を押さえたまま、うなだれた。涙の幕が張った向こう側がぼやけている。
「済まなかった。嫁入り前の娘の頬を打ったりして、とんでもないことをしてしまった。ソンニョが生きていれば、もうこの家に出入り禁止になっていただろうな」
トスがどこか懐かしむ口調で言い、そっと手を伸ばす。彼はキョンシルの頬を指の腹で撫でた。
「少し紅くなっている。待ってろ」
トスは立ち上がり厨房に行ったと思ったら、すぐに戻ってきた。どうやら水瓶に用があったらしい。
キョンシルは頬を押さえたまま、うなだれた。涙の幕が張った向こう側がぼやけている。
「済まなかった。嫁入り前の娘の頬を打ったりして、とんでもないことをしてしまった。ソンニョが生きていれば、もうこの家に出入り禁止になっていただろうな」
トスがどこか懐かしむ口調で言い、そっと手を伸ばす。彼はキョンシルの頬を指の腹で撫でた。
「少し紅くなっている。待ってろ」
トスは立ち上がり厨房に行ったと思ったら、すぐに戻ってきた。どうやら水瓶に用があったらしい。