側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
母ミヨンが生きていた頃、幼いキョンシルに亡き父の想い出を度々語ってくれたものだ。母の語る父至誠(チソン)は、博識で誰よりも流麗な文字を書くことができた。チソンもまた都では屈指の名門両班崔氏の子息であり、酒場の女将の娘ミヨンと恋仲になったため、すべてを棄てて屋敷を出たのだ。
両班の身分を棄てた父は能筆であることを活かし、町の代書屋で働いていたという。今、ソンを見ていると、キョンシルは何とはなしに母が語ってくれた父もこんな風な男だったのだろうかと、父の面影をソンに重ねるのだった。
「この本の写しは既に朝鮮にも伝わってるけどね。私は原書では読んだことがなかった。ゆえに、町の代書屋で見つけたときは、正直、眼を疑ったんだ」
両班の身分を棄てた父は能筆であることを活かし、町の代書屋で働いていたという。今、ソンを見ていると、キョンシルは何とはなしに母が語ってくれた父もこんな風な男だったのだろうかと、父の面影をソンに重ねるのだった。
「この本の写しは既に朝鮮にも伝わってるけどね。私は原書では読んだことがなかった。ゆえに、町の代書屋で見つけたときは、正直、眼を疑ったんだ」