側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
つい先刻、靴を買ってくれたときとは別人のように、惛(くら)い声。
真っ暗な闇から聞こえてくるかのようだ。あたかもソンが底なしの闇の中に消えていってしまうような気がして、キョンシルは不安になり、ソンの名をもう一度呼んだ。
「ソン、大丈夫?」
そのときだった。ソンがハッとしたような顔になり、脱兎のごとく駆け出したのだ。
「ソン、どうしたの?」
キョンシルも後をついていったけれど、ソンは脇目もふらず走り続けている。どうやら、キョンシルのことは今は眼中にないらしい。
全速力で走ろうにも、道を塞ぐ通行人に遮られ、なかなか前に進めない。血相を変えて走る二人を道行く人が怪訝な顔で見送るが、ソンは頓着はしていないようだ。
真っ暗な闇から聞こえてくるかのようだ。あたかもソンが底なしの闇の中に消えていってしまうような気がして、キョンシルは不安になり、ソンの名をもう一度呼んだ。
「ソン、大丈夫?」
そのときだった。ソンがハッとしたような顔になり、脱兎のごとく駆け出したのだ。
「ソン、どうしたの?」
キョンシルも後をついていったけれど、ソンは脇目もふらず走り続けている。どうやら、キョンシルのことは今は眼中にないらしい。
全速力で走ろうにも、道を塞ぐ通行人に遮られ、なかなか前に進めない。血相を変えて走る二人を道行く人が怪訝な顔で見送るが、ソンは頓着はしていないようだ。