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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

 と、二人の行く手に唐突に人影が立ち塞がった。
「殿下(チヨナー)、いえ、若さま」
 年の頃は六十に手が届くのではないかという老人がひっそりと立っている。光沢を抑えた黄金色のパジチョゴリを纏い、目深に鐔広の帽子を被っていた。
「―爺や」
 ソンの口からヒュッという溜息とも喘ぎともつかぬ息が洩れる。

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