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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

 背の高い老人は慇懃にソンに向かって腰を折った。
「お探ししておりましたぞ、若さま」
「そなた、何ゆえ、私の居場所が判った?」
 ソンの声が戦慄(わなな)いていた。かなり動揺しているのだろう。
「我が国の諜報部隊を甘く見て頂いては困りますな。殊におん大切なお方の行方ともなれば、皆、懸命にお探し申し上げますゆえ」
 老人は真正面からソンを見据えた。
「もう十分に気散じはおできになったでしょう。さあ、私とご一緒にお帰り下さい」
「―嫌だ」
 ソンが烈しく首を振った。

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