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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

「私はもう二度と帰らない。そのつもりで出てきたのだ。たとえ義理とはいえ、母親に何度も殺されかけるなんて、これ以上は耐えられない」
「御身の安全は、我々内官が身命を賭してお守り申し上げます。絶対に何があろうと、若さまのお生命を危険に晒すようなことは致しません」
「嫌だと言ったら、嫌だ。私は帰らぬ。王位など、欲しければ誰にでもくれてやる。私はここで名もなき民として一生を終わりたいのだ。可愛い町娘を妻とし、子や妻に囲まれて貧しくとも平穏な生涯を送る。爺、頼むから、私のことは忘れてくれ。私が姿を消せば、大妃もここまでは追いかけては来ぬだろう。後は大妃の推す義(ウィ)真(ジン)君(グン)なり義永(ウィヨン)君なりを私の後釜に据えれば良い。それですべては丸くおさまるはずではないか」

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