側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
「殿下、甘えは許されませぬぞ。皆がお帰りをお待ちしているのです」
「何度言わせる気だ、私はもう宮殿には帰らぬ!」
老人がその場に跪いた。
「殿下、臣、洪(ホン)シアン、衷心より申し上げます。殿下はこの国にとってただお一人の至高のお方におわします。即ち、殿下はこの国の父ではございませんか。無数の無辜の民が父たる殿下の存在を必要としているのです。殿下が今、一時の気の迷いで王位を投げ捨てられたとしたら、民はどうなりましょう? 殿下は大勢の我が子をお見捨てになるのですか?」
「一時の気の迷いではない。前々からずっと考えていたことだ」
ソンは決然とした表情で老人を見た。
「何度言わせる気だ、私はもう宮殿には帰らぬ!」
老人がその場に跪いた。
「殿下、臣、洪(ホン)シアン、衷心より申し上げます。殿下はこの国にとってただお一人の至高のお方におわします。即ち、殿下はこの国の父ではございませんか。無数の無辜の民が父たる殿下の存在を必要としているのです。殿下が今、一時の気の迷いで王位を投げ捨てられたとしたら、民はどうなりましょう? 殿下は大勢の我が子をお見捨てになるのですか?」
「一時の気の迷いではない。前々からずっと考えていたことだ」
ソンは決然とした表情で老人を見た。