『側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】』第14章「第三話　【むせび泣く月】　意外な事実」　660ページ

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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章第三話　【むせび泣く月】　意外な事実

普通の―ただの常民や両班の子息であれば、帰りたくないと言い張るのなら、放っておく。しかし、あの方には、そんな甘えは許されないのだ」
　老人は少し眼を眇めてキョンシルを見やってから、ソンに向き直った。
「この娘が理由でございますか？　殿下が市井で名もなき民として生きたいとそれほどまでに強く願われる理由だと？」
「そうだと言ったら、いかがするつもりだ」
　ソンは静かな声音で言う。
「シアン、少しだけ、帰る前にあの者と話をさせて欲しい」
「承知いたしました」
　シアンは邪魔にならないようにと、ソンとキョンシルから少し離れた場所に移動する。