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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 しかし、流石にキョンシルと暮らすようになってからというもの、キョンシルがきちんと洗濯してくれるし、新しい服も仕立ててくれるので、服の方だけは木綿で質素ながらも、きちんと整っている。
 そういう点は、やはり性格は違えどもは母娘だ、ミヨンとキョンシルはよく似たしっかり者である。
「―」
 指の切り傷は思いの外、深いようだ。こんな傷、ちょっと拭けば血が止まると高を括っていたら、血は止まるどころか、ますます溢れ出してくる。一向に止まらない血を眺めている中に、トスの心を嫌な予感が掠めた。
 何なのだろう、この得体の知れぬ胸騒ぎは。

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