側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第15章 王宮という名の伏魔殿
トスの脳裏にあの若者、ソンの顔が浮かんだ。端正な風貌の貴公子然とした佇まいは、彼がいずれ名のある名家の息子であることを何より物語っている。判(パン)書(ソ)、参(チヤン)判(パン)と呼ばれる高級官僚クラスの嫡子ではないかと、トスは見当をつけていた。
どちらかといえば誰にでも好感を持たれる青年だ。だが、どうにもトスはあの男が好きになれない。恋敵だというだけでなく、あの男の漂わせる不幸の翳り。うかとソンに近づけば、焔に引き寄せられて焼き殺される蛾のように、あの男の持った不幸な運命に巻き込まれてしまうような気さえする。
トスがソンを警戒するのは、そういう理由もあった。そこで、トスはハッとして立ち上がった。
どちらかといえば誰にでも好感を持たれる青年だ。だが、どうにもトスはあの男が好きになれない。恋敵だというだけでなく、あの男の漂わせる不幸の翳り。うかとソンに近づけば、焔に引き寄せられて焼き殺される蛾のように、あの男の持った不幸な運命に巻き込まれてしまうような気さえする。
トスがソンを警戒するのは、そういう理由もあった。そこで、トスはハッとして立ち上がった。