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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 その後は室に戻り、また女官たちによって美しく化粧を施された。着せられた夜着からも花の香りが噎せるように匂ってきて、元々、香油の匂いに弱いキョンシルは、それだけではや気分が悪くなりそうだ。
 髪は後ろに解き流し、幾度も梳いた後、再び一つにして編み、横で流す。それで支度が調ったのか、今度は〝尚(サン)宮さま(グンマーマ)〟と呼ばれるひときわ威厳に溢れた女官が現れた。
 歳は母ミヨンと同じくらいだろう、他の若い女官たちとは明らかに年格好、服装からして違う。
「こちらへ」
 ひと言だけ言うと、後はキョンシルの方を見ようともせずに歩き始めた。態度は丁重だが、明らかにキョンシルを見下しているのが判る。

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