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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

「あの―、一体、どこに行くのですか?」
 キョンシルは先をゆく尚宮さまに訊いてみたけれど、中年の女官はお面でも被っているのかというほど無表情に、ただ前方だけを見て歩いている。
「あの、これからどこに?」
 幾ら尚宮に訊ねても埒があかないと知り、今度は戦法を変え、若い女官に訊ねた。一行はキョンシルのいた部屋を出て、再び長い廊下を歩いている。真ん中にキョンシル、先頭が尚宮、更にその両脇を手に雪洞を捧げ持った若い女官二人が行く手を照らしている。
「余計なことは一切口にしなくともよろしい。どこに行くのかはいずれ判ることです」
 尚宮が切り捨てるように言い、傍らの若い女官たちもただひたすらうつむいているだけで、キョンシルの方を見ない。

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