テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 たとえソンの言葉に懇願に近い響きを感じ取ったとしても、キョンシルは断固として彼に止めさせるべきだったのだ。その気もないのに思わせぶりな態度を取るのが相手に対しては思いやりや優しさではない。
 あの日、キョンシルが毅然とした態度を取っていれば、トスとの間に決定的な行き違いができることもなかった。
 キョンシルはもう一度、強い声で言った。
「離してちょうだい、ソン」
 今度は、すんなりと離してくれた。キョンシルはホッとしながら、ソンを見つめた。
「そういうところも―人を地位や立場で判断しようとしない潔さも含めて、私はキョンシルを愛している」
 そう言った後で、ソンは照れくさげに笑った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ