テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

「私のことは好きじゃないんだね」
 キョンシルはつと顔を上げ、すぐにうつむいた。ソンの真っすぐな瞳を見ていられない。
「何て言ったら良いのか判らないけど」
 前置きしてから続けた。
「前にも言ったでしょ。私には好きな男がいるの。もし、その男に出逢う前にソンと出逢っていたら―」
 そして首を振る。
「ううん、こんな曖昧な言い方はいけないわよね」
「いや、私はその続きが聞きたい。キョンシル、是非、今の科白の先を教えて」
 熱心に言われ、キョンシルは断り切れず、言葉を選びながら慎重に続けた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ