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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 我ながら何とも間の抜けた応えだとは思うが、目下、思いつく言葉がなかったのだから、致し方ない。
 その時、キョンシルは俄に現実を意識した。眼の前のソンも自分も今は薄い夜着一枚きり。室はかなりの広さがあるが、明かりといえば、燭台が一つきりである。しかし、ほのかな蝋燭の明かりの下でも、薄い夜着からは身体の線が露わに透けて見えているに違いない。
 立派な燭台に赤々と燃えている蝋燭には、天翔る龍が浮き彫りになっている。龍の化身とされる国王のみが使用するものだ。
 まるで何も身につけずに素肌を晒しているような心許ない感覚になり、キョンシルは頬を上気させた。その場の空気が急に濃度を増したように思え、キョンシルは狼狽えた。

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