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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

「こんなところで寝ては、風邪を引くぞ?」
「私なら大丈夫だから、ソン」
 もがいてみたけれど、いつものことで、何の抵抗にもならない。
 ソンはキョンシルを抱き上げたまま布団の傍らまで来ると、そっと壊れ物を扱うかのような手つきで慎重に夜具に降ろした。
「何もせぬゆえ、眠ろう」
 労りに満ちた科白だ。心からの言葉であることも判った。しかし、いかにソンに何の下心もないからといっても、男と一つ布団で眠るなど、考えられないことである。それでも、わざわざ気を遣ってくれたソンの心を思えば、この布団から出ることも躊躇われる。

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