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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 視線だけで人を殺せるのならば、間違いなくキョンシルは殺されていただろう。―そうまで思えるほど、冷ややかな鋭いまなざしがキョンシルを射抜いている。
 まるで氷の針で刺し貫かれているかのような気分だ。キョンシルはそれでもにこやかに頭を下げた。
「大妃(テービ)さま(マーマ)、こちらは清国より取り寄せました茘枝にございます。大妃さまのお口に合いますかどうかは判りませぬが、どうかお召し上がり下さいませ」
 と、大妃の紅い唇が皮肉げに歪んだ。
「なるほど、若い殿下のお心を一瞬で捉えたのが頷けるほどの美貌だな。されど、美しいのは見かけだけ、やはり生まれ育ちの卑しさは隠せぬようだ。いや、あまりにも美しすぎるゆえ、かえって、頭の中が空っぽになった気の毒な娘やもしれぬ」

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