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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 王の側室に仕えるだけあって、王の一日の活動予定は把握しているのだろう。まさに秘書役として万全の体制である。たいしたものだ。感心しているキョンシルを尻目に、臨尚宮はてきぱきと支度を調えた。
 女官に命じてまた衣服を着替えさせようとするのに、キョンシルは首を振った。
「王の妃が一日に何度も着替えたのでは、民に示しがつかないでしょう。まず、王室から質素倹約のお手本を示さなくては」
 思ったままを言ったただけなのに、臨尚宮はまた感に堪えぬ顔で言う。
「淑媛さま、是が非でも、殿下の最初のお子さまは淑媛さまがお生み奉って下さいませ。できれば淑媛さまに元子さま(跡継ぎ)を生んでいただき、その王子さまに次の王位を継いで頂きとうございます」

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