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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 臨尚宮の指す方向を見ると、確かに俊宗の姿が遠くに見える。一行はゆっくり進み、更に近づいた。
 今、キョンシルが佇む場所から、王のいる場所までは大人の歩幅で五十歩ほど。王が気配に気づいたのか、ふと振り返った。キョンシルの顔を見るやいなや、満面の笑みを浮かべる。傍らに控えていた若い内官も笑顔になり王に何やら囁くのに、王は内官をぶつ真似をして、こちらに向かって走ってきた。
「殿下、弓のお稽古の最中に、お邪魔ではございませんでしたか?」
 普段はお転婆なキョンシルだが、やる気になれば、ちゃんとした言葉遣いもできるのだ。

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