テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

「いや、丁度、ひと休みしようと思っていたところだ。それにしても、黄(ファン)内官の奴、人をからかって愉しんで、性格の悪い奴だ。あいつにひそかに想いを寄せる女官でもできたら、そのときは思い切りからかってやる」
 王―ソンは一人で何やらぶつぶつと言っている。
「殿下、どうかなさいましたか?」
 キョンシルの問いに、ソンは破顔した。
 萌葱色のチョゴリに、牡丹色のチマがふんわりとひろがっている。王の妃にふさわしい華やかな装いは、キョンシルの初々しい美貌を際立たせていた。建前上は人妻になった―王の所有に帰したという証として、それまで後ろで編んで垂らしていた髪を結い上げ、幾つもの豪奢な簪で飾っている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ