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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 ソンが眼を細めたのは、何も秋の陽差しが眩しいからだけではなかった。
「なに、お付きの内官が私をからかってきたんだよ。愛妃を見た私の顔がだらしなく緩んでいて、一国の王としては見てはおられぬ無様な姿だと言うのだ」
「―」
 愛妃と言われて当然の立場ではあるが、キョンシルは否定も肯定もできず黙り込んだ。
「キョンシル、ちょっと見ていてくれ」
 ソンは言うと、キョンシルの手を引いて歩いた。やがて、内官の側まで戻ると、弓を受け取る。狙いをつけて矢をつがえるソンを見て、彼が弓矢の腕前を披露するつもりなのだと判った。

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