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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 ひと言、ひと言に、ソンがこれまで過ごしてきた歳月の哀しみと孤独が凝縮されているかのような言葉であった。ソンはまだ漸く十八歳になったばかりだ。そのけして長すぎはしない生涯がこんなにも心淋しいものであったとは、キョンシルには思いも及ばないことであった。
 黙り込んだキョンシルを見、ソンが微笑んだ。
「ごめん、こんなつまらない話、面白くも何ともないな。折角、キョンシルを歓ばせようと庭に連れ出したのに、かえって逆効果になってしまった」
 と、ソンが愕いたように眼を見開いた。
「キョンシル? どうしたんだ」
 キョンシルは自分でも知らない中に泣いていた。大粒の涙が堰を切ったように溢れ出て、止まらない。

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