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「キョンシル！？　済まなかった。私が悪かった。つまらない昔話を聞かせたりしたから」
　キョンシルは泣きながら首を振った。
「違うの。ソン、私が泣いているのはソンのせいじゃない。私、ソンがそんなに淋しい想いをしてきたなんて、これまで考えてもみなかった」
　キョンシルの瞼に一つの光景が浮かんでいた。夜毎、一人庭に出て、月を見上げて泣く幼い男の子の姿があった。月を見て泣いていたのか、月が自分を憐れんで泣いていたのか判らない―。恐らくは、涙の滲んだ瞳にぼやけて映った月が幼いソンにそのような想いを抱かせたに相違ないが、何という切なく哀しい科白だろう。