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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 ソンの思いつめたようなまなざしは、まるで試験の合格発表を待つ学生のようでもある。眼と眼が合わさった瞬間、ソンが強ばった笑みを浮かべた。
 キョンシルに最後の最後まで拒絶されるのを覚悟しているようでもあり、恐れているようでもある。
 キョンシルは言葉を失ったまま、ソンの揺れる瞳から視線を逸らした。
「殿下、そろそろ夜も更けて参りました。夜風はお身体に障りますゆえ、どうか大殿にお戻り下さいませ」
 ホン内官の言葉が風に乗って聞こえてきた。
「戻ろうか」
 どこかホッとしたような表情なのは、キョンシルが明確な意思を示さなかったからだろう。

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