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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 ソンが手を差しのべたが、キョンシルは今度はその手を取らなかった。傷ついたような表情に胸がつまるが、こんなことばかり続けていては堂々巡りだ。
「皆が待っている。行こう」
 ソンが背を向け、キョンシルもその後に続く。背後で秋の虫が侘びしげに啼いているのが酷く哀しげに聞こえた。

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