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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 ミヨンは孤児であったところ、酒場の女将にその希有な美貌を見込まれて養女となった。だが、ミヨンは恩義のある養母が亡くなった後、酒場を畳んだ。元々、酔客に身体を触られたり、閨の誘いを受けたりするのが嫌で仕方なかったのだ。
 養母は初めの中(うち)はミヨンに客の求めに応じるように言っていたものの、ミヨンが嫌がれば強要はしなかった。利に長けた女ではあったが、それなりにミヨンに情を持っていたし、大切にもしてくれたのだ。
 今でも〝お婆ちゃん(ハルモニ)〟と呼ぶその人が亡くなったは、キョンシルが三歳のときだった。ミヨンを大切にしたように、〝お婆ちゃん〟はキョンシルを実の孫のように可愛がってくれたらしいが、その記憶もキョンシルにとっては薄いものだ。

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