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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 母が酒場を止めたのは何も自分のためだけではなかった。ミヨンは一粒種のキョンシルに自分のような想いはさせたくなかったのである。酒場は妓房(キバン)でははないから、基本的に色は売らない。しかし、それはあくまでも表向きであり、客の中には、あわよくば酒場の女の柔肌に触れたいと下心を持って通ってくる輩もいる。
 相手が客だけに、幾ら嫌でも、あからさまに手を振り払ったりはできず、特に養母である女将の手前、微笑んで受け流すしかない。中には耳を塞ぎたくなるような卑猥な科白を耳許で囁く不心得な男もいて、ミヨンは幾度、物陰で悔し涙を流したかしれない。
 ミヨンはキョンシルにそんな惨めな想いはさせたくなかったのだ。

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