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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 刹那、キョンシルの瞳にソンの横顔が先刻までの彼とは全く異なって見えた。たったひと刹那の中に五十年以上も歳を取ってしまったかのように―十八歳の若者から突如として六十過ぎの老人になってしまったかのように見えたのだ。
 若々しいはずの皮膚は弛み、各所に滲みが浮いている。くっきりとした双眸は狭まり、目尻には無数の皺が刻まれていた。
 その時、キョンシルは悟った。王の座る玉座とは孤独であるだけではなく、これほどまでにも王をその人の生命を、寿命をも疲弊させ、削り取るものなのだ―。
「どうしたんだ、キョンシル」
 ソンの声に現実に立ち返り、慌てて手のひらで何度も眼をこすった。

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