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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 ソンが唇を噛みしめた。
「誰もがだ、皆がそうやって私を置き去りにしてゆく。母上も父上も、天上の月も、幾ら私が手を伸ばしても微笑みかけてはくれなかった。そなたもか、キョンシル。そなたまでもが私から離れてゆくというのか?」
 振り絞るような悲痛な叫びに、キョンシルは耳を塞ぎたくなる。だが、自分と同じだけ、ソンもまた傷ついているのだと思えば、その苦しみから眼を背けられるものではなかった。
「離れるのではないわ。遠くから、どこにいても、あなたを見守っている」
「そんなのは詭弁だ! 私から逃れたいがために、その場逃れの綺麗事を並べ立てているにすぎない」

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