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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

「どうして、ここが判ったの?」
 ひとしきりしてから、やっとトスが解放してくれたので訊ねてみた。
 すると、トスがむっつりとした顔で言った。
「あいつだ、あいつが教えてくれた」
 いつものように無愛想なトスであることに、今はこの上なく安心できた。
「ソンが?」
「ああ、全く、とんだ王さまだな。両班の若さまのふりをしてふらふらと町中を徘徊するとは、呆れた奴だ」
 キョンシルが宮殿を出ることは、あらかじめ、ソンからトスに連絡がいっていたらしい。
「トスおじさん、あのね、私、後宮にいたんだけど―」

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