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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 キョンシルが愛情ではなく真心で接したのと同じように、ソンも彼女に真心を返してくれたのだ。
 トスもまた喉に込み上げる苦さを抑え込んだ。キョンシルが見知らぬ男と何度も褥を共にした―たとえ二人の間に何もなかったとしてもだ―という事実は、予想外に彼を動揺させ、嫉妬させていた。
 だが、キョンシルは無事に帰ってきたのだ。今はもう何も問うべきではないと判っていたし、ソンというあの男―愕くべきことに、朝鮮国王だった―が嘘偽りを口にするような人間ではないことは、トスにも判った。
「それから、私が攫われる前に、ソンと二人でいたときのことをトスおじさんは誤解して―」

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